
☑「眼圧は正常と言われたのに、なぜ緑内障なの?」
☑ 「点眼で眼圧が下がっているのに、視野が悪くなることはありますか」
—正常眼圧緑内障の患者さんから、よくいただく質問です。
結論からいうと、眼圧が正常範囲にあっても、緑内障は発症・進行することがあります。大切なのは、その方の目にとって安全な眼圧、OCTや視野検査の経時変化、点眼状況、全身状態などを合わせて評価することです。
本記事は、森田 修医師が2026年9月に行った眼科医向けの講演「眼圧だけでは語れない 正常眼圧緑内障の治療戦略」で扱った内容を、患者さん向けに分かりやすく解説しています。緑内障の種類・検査・治療の全体像を先に確認したい方は、森田眼科の緑内障ページをご覧ください。
正常の眼圧でも進行することがある
この記事の要点
・『眼圧が正常』のは、すべての人の視神経に安全という意味ではありません。
・進行の判断には、眼圧だけでなくOCTと視野検査の推移も重要です。
・目標眼圧は、病期、進行速度、年齢、生活への影響などから個別に決めます。
・眼圧下降が治療の基本です。眼圧以外の要因や視神経保護は慎重に評価します。
・点眼を自己判断で中止・変更しないでください。
【目次】
正常眼圧緑内障とは
正常眼圧緑内障は、診察時の眼圧が正常範囲にありながら、視神経が傷み、特徴的な視野障害が生じる病気です。日本では、緑内障の中でも正常眼圧緑内障が最も多いことが知られています。
ここでいう「正常」は全体の統計上の範囲です。視神経が耐えられる眼圧には個人差があるため、同じ眼圧でも影響の受け方は異なります。そのため、正常値に入っているかどうかだけで治療の要否や効果を判断することはできません。
眼圧が正常でも進行する3つの理由
1.統計上の正常値と、その人の目標眼圧は違う
眼圧の検査値が正常範囲でも、その方の視神経にとっては負担になっている場合があります。緑内障治療では、視神経と視野を守るための「目標眼圧」を患者さんごとに設定します。
2.眼圧は時間帯や日によって変動する
眼圧は一日の中でも変動し、季節や測定条件によっても違いが出ます。外来で測った一度の値だけでは、別の時間帯の上昇を捉えられないことがあります。また、角膜の厚さなどが測定値の解釈に影響するため、数値は目の状態と合わせて見ます。
3.眼圧以外の要因も関係する可能性がある
睡眠時無呼吸症候群、夜間の血圧低下、睡眠姿勢などと緑内障の関連が研究されています。ただし、関連があることと、原因や治療法が確立していることは同じではありません。必要な場合に、内科や睡眠医療の専門医と連携して確認します。
進行しているかはOCTと視野検査の「変化」で判断

緑内障は、視神経の構造と見え方の機能の両方を評価します。OCTでは網膜神経線維層などの厚さを、視野検査では見えにくい範囲とその程度を確認します。
重要なのは、1回の結果だけで決めないことです。検査にはばらつきがあるため、複数回の結果を並べ、同じ場所が繰り返し悪化しているか、悪化の速度がどの程度かを見ます。視野検査の「MDスロープ」は、視野全体が1年あたりどのくらい変化しているかを考える指標の一つですが、単独で治療方針を決めるものではありません。
進行速度が同じでも、病期、障害している場所、年齢、推定される今後の期間によって意味は変わります。中心に近い視野障害や進行が速い場合には、より早い治療強化を検討することがあります。
目標眼圧はどのように決めるのか
目標眼圧は、未治療時の眼圧、視神経・視野障害の程度、進行速度、年齢、生活への影響、治療の負担などを踏まえて個別に決めます。治療開始後も固定ではなく、検査の推移によって見直します。
正常眼圧緑内障の代表的な臨床研究では、未治療時から約20%の眼圧下降を目標にした群で、進行を抑える効果が示されました。ただし、すべての患者さんに一律に20%を当てはめるものではありません。もともとの眼圧が低い方では、さらに下げる利益と、点眼の副作用や手術のリスクとのバランスが重要になります。
川口市の森田眼科では、正常眼圧緑内障に対してはまず20%程度の眼圧下降を目安にし、進行が続く場合には無治療時より30%またはより低い目標を検討する必要があります。実際の目標値は診察・検査に基づいて決めます。患者さん自身で点眼回数を増減しないでください。
治療を見直すときの順序
1.本当に進行しているかを確認する
視野検査のばらつき、白内障などの影響、OCTの測定状態を確認し、複数の結果から進行を判断します。片方の目だけ急に悪化するなど、典型的でない経過では、別の病気が隠れていないかを検討することもあります。
2.点眼が予定どおり使えているか、負担がないかを確認する
点眼を忘れる、液が目に入らない、回数が多く続けにくい、充血やかゆみがつらい、といった問題は治療効果に影響します。責めるための確認ではありません。使い方や薬の組み合わせを調整する材料になるため、困っていることをそのままお伝えください。
3.目標眼圧を見直し、治療を追加・変更する
進行が確認され、現在の眼圧では十分でないと考えられる場合は、点眼の変更・追加、レーザー治療、手術を検討します。治療法は、得られる眼圧下降、副作用、通院や点眼の負担を比べて選びます。
治療を見直す一般的なタイミングは、緑内障治療、見直すのはいつ?でも解説しています。
4.レーザー・手術は「数字」だけで決めない
正常眼圧緑内障では、もともとの眼圧が低いため、さらに眼圧を下げる治療では利益とリスクの見極めが特に重要です。視野が悪化する速さ、今後の生活への影響、点眼で達成できる眼圧、手術合併症の可能性などを総合して判断します。
▶手術の種類や当院の案内は、日帰り緑内障手術をご確認ください。
眼圧以外に確認すること

眼圧が低いのに進行が疑われる場合、問診では睡眠時無呼吸の指摘、いびきや日中の強い眠気、低血圧や夜間の血圧、貧血、呼吸器・循環器の病気、服薬状況などを確認することがあります。必要な項目は患者さんごとに異なります。
| ⚠大切な注意 ⚠ 血圧の薬、睡眠時無呼吸の治療、緑内障点眼を自己判断で中止・変更しないでください。夜間血圧が気になる場合も、眼科と内科医が情報を共有し、全身の利益と目の状態を両方見て判断します。 |
視神経保護は現在どこまで分かっているか
眼圧を下げる以外の方法で視神経を守る「神経保護」は重要な研究テーマです。基礎研究や一部の臨床研究で期待される結果はありますが、それらの結果をそのまま患者さんの治療効果と考えることはできません。
現時点で、緑内障治療の確立した土台は眼圧を下げることです。視神経保護効果が期待されている点眼薬やサプリメントはありますが、その効果が確立されているわけではないので、患者さんの状況を踏まえて治療に取り入れます。
森田眼科での正常眼圧緑内障の診療
森田眼科では、眼圧の数値だけでなく、視神経乳頭、OCT、視野検査、角膜の状態、これまでの検査推移や点眼状況を確認し、患者さんごとの目標眼圧と治療方針を検討します。検査は一度ですべてを決めるのではなく、必要に応じて時期を分け、変化を評価します。
▶健康診断で視神経乳頭陥凹拡大を指摘された方は、視神経乳頭陥凹拡大とは?も参考にしてください。
▶森田医師については、医師紹介をご覧ください。
よくある質問
Q1.眼圧が正常でも緑内障になるのですか?
はい。正常眼圧緑内障は、眼圧が正常範囲でも視神経障害と視野障害が起こる緑内障です。正常値かどうかだけでなく、視神経・OCT・視野検査を合わせて診断します。
Q2.眼圧が下がっていれば、進行しませんか?
眼圧下降は進行を抑える基本ですが、完全に止まるとは限りません。OCTや視野検査の経時変化を確認し、進行があれば目標眼圧や治療を見直します。
Q3.目標眼圧は何mmHgですか?
一律の数値ではありません。未治療時の眼圧、病期、進行速度、年齢、障害の位置、治療負担などから決め、経過に応じて調整します。
Q4.自覚症状がなくても点眼は必要ですか?
緑内障は初期から中期に自覚しにくいことがあります。点眼は将来の視機能を守るために行う治療です。中止したい事情や副作用がある場合は、自己判断で止めず医師にご相談ください。
アクセス・予約
眼圧の数字だけでなく、長期の変化を確認しましょう
正常眼圧緑内障では、眼圧が正常範囲であることだけでは安心とも危険とも判断できません。患者さんごとの目標眼圧を考え、OCTと視野検査の変化を追い、進行速度と生活への影響から治療を調整することが大切です。
点眼を続けていても進行が心配な方、検査結果の変化を指摘された方、副作用や点眼の負担でお困りの方は、一般外来でご相談ください。
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当日予約も可能
【アクセス】

JR京浜東北線「西川口駅」東口より徒歩4分です。
川口市はもちろん、蕨市や戸田市、さいたま市からもアクセス良好です。
監修医師
森田 修(もりた しゅう)
森田眼科 副院長
医学博士 / 眼科専門医
順天堂大学浦安病院 眼科 外来医長
詳しくは緑内障診療のページをご覧ください