2023.05.11疾患から探す

眼科専門医 森田修

加齢に伴い、網膜の中心に出血やむくみをきたし視力が低下する病気です。 放置すると進行し視力の回復が不能になります。

加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)とは

加齢黄斑変性症とは、網膜の中心部にある黄斑(おうはん)という組織に障害が生じることで、視力が低下してしまう病気です。

網膜は対象物を映し出すスクリーンの役割をしているシートのようなもので、目の奥に張り巡らされております。そして、その網膜というスクリーンに映った対象物の情報を、視神経を通じて脳に伝えることで認知します。この網膜の中心部分が黄斑と呼ばれる箇所になります。

この黄斑が加齢によって、変性してしまうことで様々な目の症状が起こり得ます。よくみられる症状は、中心部が見えにくい、ゆがんで見える、視力が低下するなどです。以下のすぐわかる検査法でご自身で確認してみてください。

緑内障、糖尿病網膜症と並び、失明の原因として多い疾患になりますので注意が必要です。

すぐわかる検査法

①片方の目だけで見てください。
②下の格子状の図中にある中心の黒い点を見つめてください。

このとき、黒い点を含む中央のあたりが、ゆがんで見えたり、部分的に欠けて見えたりしませんか?そのような場合は速やかに森田眼科までお越しください。

加齢黄斑変性症の原因

加齢黄斑変性症は①滲出型(しんしゅつがた)と②委縮型(いしゅくがた)の2つのタイプに分けられます。このうち、滲出型は目の中に注射(硝子体注射)をすることで治療することができますが、萎縮型は生活習慣の改善やサプリメントで少しでも悪化しないように努めるしかできません。

①滲出型加齢黄斑変性症

加齢とともに網膜に老廃物が溜まってしまうことで、網膜のバリア機能が弱くなり、未熟な血管(新生血管)が生じます。新生血管によって、出血や滲出液による網膜浮腫(腫れ/むくみ)をきたします。そして、ものが歪んで見える、視野が暗くなる、視力が低下するといった症状があらわれます。

②萎縮型加齢黄斑変性症

加齢に伴って網膜に老廃物が溜まってしまうことで網膜の細胞の変性がおこり、徐々に組織が萎縮していきます。滲出型のように新生血管が発生するものではなく、病状も非常にゆっくりと進行していきます。

糖尿病網膜症の予防と治療

加齢黄斑変性症の治療については、病型によって異なります。また、治療ほどの強い効果はありませんが、発症や進行を予防する方法があり、それについてはどちらの病型も共通です。

予防法

生活習慣を整える

バランスの良い食事を心がけましょう。加齢黄斑変性の発症予防に良いとされる栄養素として、ビタミンA、C、E などの抗酸化ビタミンやルテインなどのカロテノイド、亜鉛などの抗酸化ミネラル、ωオメガ-3 多価不飽和脂肪酸などが知られています。

緑黄色野菜には抗酸化ビタミン・カロテノイドが豊富に含まれています。また、穀類、貝類、根菜類には亜鉛が含まれていますし、魚類などにはω -3 多価不飽和脂肪酸が含まれています。

禁煙

多くの研究結果から、喫煙は加齢黄斑変性の危険因子となることが明らかにされています。喫煙している方には禁煙が強く勧められます。禁煙することで発症の危険が2/3~1/2に減少するとも言われています。

サングラスやUVカットのレンズで日光から目を守る

太陽光(とくに青色光)は、黄斑の老化に関係するといわれています。屋外では帽子をかぶり、サングラスなどで目を守りましょう。また、パソコンやテレビなどの青色光も同様に良くないといわれています。長時間のパソコンの使用やテレビの観賞は控えましょう。

サプリメントによる補助療法

大規模な臨床試験で加齢黄斑変性症の発症危険が高い状態にある方や、片眼が加齢黄斑変性症を発症している方ではサプリメントによる補助療法が有効であると証明されております。

目の状態によっては20%程度が加齢黄斑変性症の発症があり、片眼が加齢黄斑変性症による視力低下のある方は40%程度が健康な眼にも発症すると言われています。このような患者様はサプリメントを内服することを勧めています。発症の抑制効果としては、25-30%程度です。

森田眼科ではサプリメントによる補助療法を導入しております。詳しくはこちらをご覧ください。

治療法

①滲出型加齢黄斑変性症の治療

未熟な血管(新生血管)の勢いを抑えるための治療が必要になります。

一般には、新生血管の発生を防ぐことができる薬剤を目の中に直接注入する硝子体注射による治療を行います。症状や新生血管の発生している箇所に応じて、レーザー治療を行うことがあります。

森田眼科では硝子体注射を実施しております。加齢黄斑変性症に対する硝子体注射のスケジュールには以下の3パターンがありますが現状は1)が最も良いと言われております。いずれの方法も、残念ながら加齢黄斑変性症が発症する前ほどには見えるようになりません。ある程度改善して、それを維持するための治療となります。“導入期”という活動性を抑えるための注射の時期があり、その後は“維持期”といって再発させないように管理していくことが重要です。

1)3+TAE(Treat and extend)

毎月1回の注射を3回(3ヶ月)行います。その後は、1か月ずつ投与間隔を伸ばしていって、再発しない投与間隔を探していきます。最大4か月まで投与間隔を延長することができます。場合によってはこまめに注射をしないと活動性が抑えられない場合があり、そのような時には薬剤を変更したり、レーザー治療を検討します。この方法が最もバランスのよい治療だと言われておりますが、いつまで治療をするべきかは、まだ明らかになっておりません。

2)3+PRN(Pro re nata)

毎月1回の注射を3回(3ヶ月)行います。その後は、“必要時投与”となります。毎月通院していただいて、悪化を認めた場合に投与します。この方法では毎月の通院が必要になることと、悪くなってから投与するため、見え方が徐々に低下してしまいます。

3)固定投与

決まった間隔(1か月毎、2か月毎など)で注射をします。過剰投与の問題もあり、初めから行われることは少ないです。1)や2)の方法で注射を行って、再発させないための投与間隔がわかってきたら固定投与に移行させることがあります。

②萎縮型加齢黄斑変性症の治療

萎縮型の場合は、根本的な治療方法は現状ではありません。しかし、滲出型に移行するもあるため、定期的に検査をして状態を確認していくことが必要です。

また、生活習慣の改善やサプリメントでできることを少しでもやっていきます。

森田眼科では加齢黄斑変性症に対する硝子体注射やサプリメントによる補助療法を行っております。気になることがあれば、気軽にご相談ください。